古事記オンライン講座

伊耶那岐命いざなきのみこと黄泉よみの国訪問

伊耶那岐命いざなきのみことは妻を忘れきれず、死の国と言われる黄泉よみの国を訪ねる。伊耶那岐命いざなきのみことが御殿の前に辿り着くと「まだ国作りは終わっていない。愛しい妻よ帰ってきてほしい」と呼びかけた。
すると中から伊耶那美命いざなみのみことが「あぁ残念です。こちらの国の食べ物を食べたからもう帰れません』しかし「ここまで来てくれたのだから黄泉よみの国の神様に聞いてみます」と…そして「待っている間、決して中を覗かないで下さい」と約束をして奥に帰った。
しかし、あまりにも永い間待たされて不安になった伊耶那岐命いざなきのみことは、約束を破り戸を開けて中を覗いてしまったのである。そこに居たのは腐敗して全身ウジに覆われ、八柱の雷神が憑りついている、見る影もない恐ろしい伊耶那美命いざなみのみことの姿であった。これを見た伊耶那岐命いざなきのみことは驚きのあまり音を立ててしまう。音に気づいた伊耶那美命いざなみのみことは「私の言葉を疑い、見せたくない姿まで見られた。それも一番見られたくない愛する人に・・・」怒った伊耶那美命いざなみのみこと伊耶那岐命いざなきのみこと黄泉醜女よもつしこめを放つ。伊耶那岐命いざなきのみことは恐ろしくなり、その場を逃げ去ってしまうのである。

伊耶那岐命いざなきのみことは迫ってくる追手を追い払うために黒御鬘くろみかづら(黒い髪飾り)を黄泉醜女よもつしこめに投げつける。この黒御鬘くろみかづら蒲子えびかづらのみ(野葡萄)になり、これを黄泉醜女よもつしこめが食べている間に逃げた。しかし、またもや黄泉醜女よもつしこめが迫ってきたので、今度は右の髪に刺してあった櫛の歯を折って投げつける。すると櫛の歯が筍に変わり、これを黄泉醜女よもつしこめが引っこ抜き食べている間に逃げた。
次に八柱の雷神が大軍を率いて追って来ると、これを伊耶那岐命いざなきのみことは腰に帯びていた十拳剣とつかのけんを抜いて後ろ手で振りながら逃げる。尚も迫る軍勢に黄泉比良坂よもつひらさかの麓に生えていた桃の実を三つ投げつけて撃退した。
伊耶那岐命いざなきのみことは桃の実に感謝してこの桃に「意富加牟豆美命おおかむづみのもこと」と名付ける事にした。
最後に伊耶那美命いざなみのみこと自身が追ってきたが、追いつかれようとしたその時、伊耶那岐命いざなきのみこと千引ちびきいわ(大岩)を持って道を塞ぎます。二神は大岩を間にして向かい合い、別れの言葉を告げることになる。
伊耶那美命いざなみのみことは「私はあなたの国の人々を一日に1000人殺します」と言ったが、対する伊耶那岐命いざなきのみことは「貴女がそのようなことをするなら、私は一日に1500人の子を誕生させよう」と返した。これで一日に1000人が死に、一日に1500人が生まれるようになったと言われる。これは人の生と死の起源とされる話になり、伊耶那美命いざなみのみことはこの事によって黄泉津大神よもつおおかみ道敷大神ちしきのおおかみと呼ばれるようになった。また黄泉比良坂よもつひらさかを塞ぐ大きな岩の事を道反之大神ちがえしのおおかみ黄泉よみの国の出入り口を塞ぐ神という意味の黄泉戸大神よみどのおおかみとも呼ぶ。