古事記オンライン講座
大国主神の根の国訪問
やっと八十神達から逃れた大国主神が根の堅州国に辿り着くと、須佐之男尊の娘である須勢理毘売が出迎えた。初めての出会いであった二神だったが、すぐに心を通い合わせ婚姻を言い交す。そこで須勢理毘売が父神の須佐之男尊の元へ連れて行き「立派な神様が来ておられます」と言った。
そこで大国主神を一目見た須佐之男尊は数々の試練を大国主神に課すことにした。
まず須佐之男尊は、大国主神を無数の蛇の這い回る室屋に寝かせた。須勢理毘売が蛇を祓う領巾を大国主神に渡し「この領巾を三度振って蛇を追い払いなさい」と言った。大国主神がこの言葉通りにすると蛇はあっさり退散してしまう。
次の日の夜大国主神は、ムカデと蜂のいる室屋に入れられた。今度も須勢理毘売がムカデと蜂を祓う領巾を大国主神に渡して難を逃れる。
さらに須佐之男尊は、大国主神に鳴鏑(矢の先端の鏑に穴を空け、放つと音が出る矢)を野原に放ち、その鳴鏑を取ってくるように命じた。そこへ須佐之男尊は火を放ち大国主神は逃げ場を失ってしまう。
その時どこからか鼠が現れて大国主神の窮地を救う。その鼠が教えてくれた洞穴に入り隠れていると、野を焼いていた炎は洞穴の上を通り過ぎて難を逃れた。さらに鼠は須佐之男尊の鳴鏑を銜えて大国主神の元に渡した。
こうして命がけの三つ目の試練を乗り越えた大国主神だったが、須佐之男尊の試練はまだ終わらなかった。自らの頭の虱を取るように大国主神に命じたが、須佐之男尊の頭を覗くとムカデが巣くっていた。ここでも須勢理毘売が機転を利かせ助ける。
椋の実と赤土を大国主神に手渡し、それを嚙み砕いて吐き出させた。須佐之男尊はこれを見てムカデを嚙み潰したと思い、安心し眠りについた。
この隙に二神は須佐之男尊の髪を室屋の柱に結び付け、入口を大岩で塞いで逃げ出した。そして須佐之男尊の大事な宝物である生太刀と生弓矢と天詔琴を持ち出していたが、急いで逃げたので天詔琴が木の枝に触れて音が鳴り響いた。この音を聞いて目覚めた須佐之男尊だったが、柱に結んだ髪を解く間に二神は遠くに逃げおおせた。
須佐之男尊は黄泉比良坂まで二神を追って行き「生太刀と生弓矢で、八十神達を追い払い大国主神になれ。そして宇都志国玉神(葦原中国の霊)となって、須勢理毘売を妻とし宇迦の山の麓に、大きな宮殿を建てて住め」と呼びかけて大国主神をついに認めたのである。この時正式に大国主神という名を授かったと言われる。