スサノオ小説

第12章「神々の会議」

第12章「神々の会議」

一方、困り果てた神々は知恵を司る神、オモイカネを中心に天安河原に集まった。

川が流れる脇の山をえぐったような場所だった。

今が夜なのか昼なのか、いつもなら優しく足元を照らすツクヨミの姿すら見えない。

凍りつくような静けさに神々は不安そうに語り始めた。

『これは一大事じゃ、どうしたら良いものかの〜』

『本当です。このままでは高天原が決壊します。どうしましょう』

『おぃ!オモイカネ、お主は知恵者だろう!何か良い作でもないのか?』

『わしにはいくつか策がある』

『しかし、これはワシ一人でやれるものではない。お主らが力を合わせてこそ、ことは運ぶ。』

『何なりと言ってください。私で何か役に立てることがあればなんでもやります!』

『おぅ!ワシもじゃ』

『ああ、わたしも!』

神々は口を揃えて言った。

『まずは朝が来たと鶏に鳴かせて見るのじゃ。お主はここに鶏を持ってくるのじゃ』

『それは良い策じゃ』

そして、御殿で飼っていた鶏を持ってきて鳴かせてみた。

『コケコッコー』

『どうだ!』

『全く反応がありません。』

『これはダメか…』

『やはり、この策しかないのか?この策は気がひけるのじゃが仕方ない』

そう言うとオモイカネは仕方なさそうな顔をしてその策をみんなに伝える。

『なんでござるか?』

『早く教えてくれ!』

神々は焦る様に言った。

『この策はアマテラス様を騙す様で気がひけるのじゃが、仕方あるまい』

そう言うと神々は中心に集まった。

『その策というのはこんな策じゃ』

『アマテラス様に良く似た神様が現れたと言ってお祭りを始めるのじゃ』

『おぅ!』

一瞬神々は雑いたがお互いの顔を見合わせ、互いに頷く。

『流石のアマテラス様もこれを聞いては表に出てくるはずじゃ』

『おぅ!それは良いぞ!』

『それなら上手くいきそうじゃ!』

互いの顔を見合わせ頷く。

『お主ら、これはアマテラス様を騙すことになるんじゃぞ!それでも本当に良いのか?』

オモイカネは再度みんなの意思を確認する。

『うん、仕方あるまい』

『そうだ!そうだ!』

神々は納得した様子だった。

『よし分かった。お主らが本当にこれで良いというのなら、その先の計画を話そう!』

『本当に良いんだな』

オモイカネは更にみんなの意思を確認する。

『さあ、分かったからその先を聞かせてくれ!』

焦る様に神々は言った。

『先ずはお祭りといえば、歌と踊りと笑いじゃ!』

『しかし、いい加減ではいけない。やるからには本気でやってもらわなければならん』

『誰かやってくれるものはいないか?』

オモイカネは神々を見回した。

『ほ、ほ、ほ、ほ、ほ〜、それでしたら私を置いて他にはいないでしょう』

すると神々の後方から声がした。

神々は道を開けると【キラキラキラ】と音を立てて煌びやかな装いでアメノウズメが前に出来た。

『おぅ!ウズメか!それはお主しかいまい!』

オモイカネは初めから決めていた様にウズメを出迎えた。

『そうだそうだ適任だ!』

他の神々も同意した。

『ウズメよ。お主に頼んでも良いか?』

『はい、何なりと!』

『よい、お主がやってくれるのなら心配はいらん。思いっきりやるのじゃ!遠慮はいらんぞ!』

『はい、お任せあれ!』

ウズメはなんの気負いもなく、引き受けてくれた。

『さぁ問題はここからじゃ』

『アマテラス様はきっと扉を少し開けて外を覗くに違いない』

『その時にこの八咫鏡をアマテラス様の顔の前に置いてもらいたいのじゃ』

『それでしたら私にお任せを』

『おぅ!』

『おぅ!フトダマか!』

『では、その役はフトダマに頼むとしよう!』

そう言うと八咫鏡をフトダマに渡した。

『そして、ウズメの踊りに合わせてアマテラス様の心が穏やかになる祝詞を唱えてくれる者が欲しい、誰かおらぬか?』

『それでしたら私に』

『コヤネか!では、コヤネに任せよう』

『アマテラスの心を鎮める祝詞を書くのじゃ!』

『はい、お安い御用!』

そう言うとコヤネは早速、頭をひねり出した。

『さぁ、最後の仕上げじゃ』

『アマテラス様は鏡に映った自分姿を見て信じるはずじゃ』

『その時きっともう一歩前に出て外を確認するに違いない』

『コレは是非タジカラオに頼みたい。お主のその怪力が必要じゃ』

『その怪力で岩戸の扉をこじ開け、アマテラス様を救ってもらいたい。』

『私でお役に立つのであればお任せあれ!』

『よい、これで役者は揃った。みんなの力を合わせてアマテラス様を救おうではないか!』

【おぅ!】

神々は声をあげた!

こうやって作戦を練り始める。

一方、スサノオはシコメ達を退治するための武器を作っていた。

『どうだ!これで一網打尽だ!』

スサノオは自慢げに言った。

『これはすごい武器ですね。ただ本当にこれで良いのでしょうか?』

ヒョロは頭を傾げる。

『これで良い?』

スサノオは答えた。

『はい、母上は力と武力は違うと言ってました。』

『力でねじ伏せれば必ず時を経て、力が衰えたとき、次の力からねじ伏せられる。』

『真の力は戦うことではないと。』

ヒョロはうな垂れる様に言った。

『なにを面倒くさいことを言っている。奴らを皆殺しにすれば解決するんだ!それが、このことを起こした俺の責任なんだ!』

スサノオは面倒くさそうに言った。

『そうだ!そうだ!』

コマが息巻いて言った。

『何だかお前とは息があって来たなぁ』

『そうだな、だが、まだ許したわけではないぞ』

コマは生意気そうな顔で言った。

二人は親指を立てて言った。

『それはそうですが…』

ヒョロは納得いかない様子だ。

『よし、出発するぞ!』

『はい、スサノオ様!』

ヒョロは戸惑いながらもスサノオの後をついて行った。

洞窟から出ると、そこは悲惨な光景が広がっていた。

町は焼き尽くされ、神の死体が至る所に転がっている。

『おい、おい、こりゃひでぇや』

コマが言った。

スサノオはその光景をものともせずシコメに立ち向かって行った。

『さあ、どこからでもかかって来い!』

シコメはスサノオの掛け声を聞くと、一斉に襲って来た。スサノオは腰に巻きつけた袋の中から、櫛を出し投げつけた。

すると、無数の筍が出て来た。

シコメはその筍をかじろうとしたその瞬間、筍は一気に伸び、竹になった。

その竹はシコメ達を貫き、串刺しにした。

『どうだ!』

スサノオの武器は効果を上げた。

スサノオは岩の陰にシコメ達を誘き寄せる。

『さあ、こっちに来い!』

スサノオが叫ぶ。

『スサノオ!俺に任せな!さあ、シコメよ、こっちに来い!』

コマがシコメに近づき挑発する。

シコメ達は一斉にコマに襲いかかる。

コマはスサノオの元へ駆け込む。

その時である。

岩の陰に成っていた桃を千切って投げつけた。

ヒョロも一緒に投げつける。

その桃を喰らい、シコメ達は煙となって消えた。

スサノオはシコメを次々と倒す。

『こんな雑魚どもは相手にならん!さっきの赤鬼はどこ行ったんだ!俺様が退治してやる!』

『俺ならここにいるぞ!』

赤鬼は棍棒でスサノオに殴りかかる。しかし、スサノオはその棍棒を両手で掴む。

その威力は凄まじく、スサノオの足は地面にめり込む。

『うりゃ〜』

それでもスサノオは棍棒ごと赤鬼を投げ倒す。

【バサッ!】

赤鬼は地面に叩きつけられた。

起き上がった赤鬼は、また棍棒で殴り掛かる。

スサノオがその棍棒を掴もうとした瞬間、頭を叩きつけられた。

『ハッ、ハッ、ハッ!』

『スサノオよ、1人だと思うな!ここにもいるんだよ!』

全身が青い、青鬼が現れた。

2人は一斉に襲いかかる。

スサノオは赤鬼と青鬼の攻撃をかわしながら、周囲を見渡す。

【おいおい、こりゃ大変だ。スサノオ様は大丈夫か?』

コマが心配そうに言う。

『スサノオ様、大丈夫ですか?』

ヒョロもいてもたってもいられず声をあげた。

しかし、赤鬼と青鬼の勢いは止まらない。

赤鬼と青鬼が同時に棍棒を振り下ろした。

その時、スサノオは両手を広げその棍棒を受け止めた。

『うりゃ!』

スサノオは跪く。

その時スサノオが大声をあげた!

『ウォ〜!』

背中の筋肉が隆起し、そこに鬼の姿が浮かび上がった。

すると、大地が揺れ、山が噴火し、無数の岩石が飛んできた。

シコメ達は一斉に逃げるが、次々に岩石に当たり、潰されていく。

そして、その太い腕で赤鬼と青鬼を棍棒ごと持ち上げた。

スサノオを中心に勢いよく回り出す。

青鬼と青鬼は天の彼方に飛ばされて行った。

『さぁかかって来い!お前らこんなもんか!』

スサノオがそう言うと、暗い闇に閉ざされていた天が赤く染まっていく。さらに、霧が立ち込める。冷たい空気が頬を伝い、死臭が漂う。それはなんとも不気味だった。

『スサノオ様、これはなんですか?』

ヒョロは怯えながら言った。